本当に怖い病気狂犬病を考える 愛知県 一宮市の動物病院 ふるはし動物病院 | 経歴・学会発表

経歴・学会発表

本当に怖い病気狂犬病を考える


つい先日新聞で37年ぶりに国内で狂犬病の死亡者が2名でたと報道されました。国内での感染ではなく、フィリピンで野良犬に噛まれ、日本に戻ってきてから発病したそうです。獣医師という仕事をしている我々にとっては他人事ではありませんでした。今回はこの狂犬病について詳しくお話したいと思います。

<狂犬病とは>
 狂犬病は、犬以外に人を含めて全ての哺乳類が感染し、発病すると有効な治療法もなく、悲惨な神経症状を示してほぼ100%死亡する恐ろしいウィルス性の人畜共通感染症です。
 高度な医療が発達した現在でも、世界では毎年50,000人の人間と数十万頭の動物が死亡していると推定されています。

<病原体>
 狂犬病の病原体はウィルスで、分類学的にはインフルエンザや麻疹などと同じで、ラブドウィルス科のリッサウィルス属に分類されます。

<発生状況>
 日本は、オーストラリア、イギリス、ニュ-ジーランドと並んで狂犬病清浄国であり、島国であるという国土のため自国での発生はありません。インドでは、毎年30,000人の死亡が報告されています。狂犬病ウィルスの感染源動物は、先進国では主に野生動物で、北米ではアライグマ、スカンク、キツネ、食虫コウモリ、ヨーロッパではアカキツネが中心になっています。発展途上国では主に犬、吸血コウモリです。最近ロシア、中国、北朝鮮、東南アジアでは、実態数が不明な狂犬病の発生がみられ、外国船が日本の港についた際に、乗っていた犬が日本に捨てられていくことが一部で問題になったことがありました。

<症状>
 狂犬病ウィルスは、主に発病動物に噛まれ、唾液中に排泄されたウィルスが傷口より体内に侵入し、末梢神経を介し中枢神経組織で増殖し、さらに唾液腺でウィルスは増えます。潜伏期間は長く平均1~2ヶ月ですが、発病すると物事に過敏になり、狂騒状態となり動物は目の前のもの全てに噛みつくことになります。その後は全身麻痺で昏睡状態になり死亡します。人では水を飲む時その刺激で喉や全身の痙攣が起こり水を飲めない事から『狂水症』とも呼ばれています。

<治療・予防>
 発病した動物については現在有効な治療法はなく、100%近くが死亡してしまいます。しかし、人の場合は、本病は潜伏期間が長いため、噛まれた直後であれば傷口の洗浄を行い、ワクチンを接種することで発病を防ぐ事ができます。その際、0日、3日、7日、14日、30日の5回接種が行われており場合によっては、90日目に6回目を接種することになります。動物においては、発病すればすべて殺処分し、迅速に隔離することになります。
 フィリピンの件においてもわかるように、海外ではむやみに動物に触らない、特に野生動物や野犬は危険です。また渡航前には必ずワクチンを接種することが大切です。

<日本の狂犬病ワクチンの現状>
 1950年に狂犬病予防法が制定されて、犬の狂犬病ワクチンの接種が義務付けられました。そのおかげで現在まで国内発症はありませんでした。しかし現状は、犬の飼育頭数は年々増加しているにもかかわらず、狂犬病ワクチンの接種率は低下しています。去年のデータ-では登録頭数の45%ぐらいではないかと推測されています。その理由として狂犬病そのもの認識が少ないこと、ワクチン接種に対する副作用(現在はほとんどありません)の不安、集合注射の不便さなどさまざまです。実際には欧米では猫においても狂犬病ワクチンの接種を義務付けています。自分の飼い犬に噛まれて狂犬病になるなんてことはありえないことですが、もし日本で狂犬病が大発生したら大変なパニックになってしまうことが明らかです。狂犬病接種をしていないペットオーナーにとっては考え直さないといけないことかもしれません。

一覧に戻る



COPYRIGHT(C)2012 FURUHASHI ANIMAL HOSPITAL