獣医さんの卵が巣立つまで
 愛知県 一宮市の動物病院 ふるはし動物病院 | 経歴・学会発表

経歴・学会発表

獣医さんの卵が巣立つまで


 大学を卒業した獣医師が、ふるはし動物病院で勤務して、勉強をしながら多くのことを経験していきます。その後は自分将来の道を歩むために当院から巣立っていきますが、どんな道を歩んでいくのかを今回紹介したいと思います。
 
大学を卒業した獣医師の進路は?
 獣医科大学では年間900~1,000名ぐらいの獣医師が国家試験を合格して社会に出ていきます。就職先としては多くは3つに分かれます。一つが私たち動物病院での犬猫を中心とした臨床現場です。だいたい50%近くの卒業生が就職します。二つ目が公務員関係です。公務員と言っても職域は広く保健所で食品安全管理(食中毒の行政指導など)、動物管理センターでの仕事、家畜保健所での産業動物(牛、豚、ニワトリなど)の行政管理から動物園での診療まで様々です。40%ぐらいがこの方面に就職します。残り10%は産業動物の獣医師と企業や大学での研究者になります。私が卒業した25年前は動物病院の就職は40%以下でほとんどが公務員と産業動物に就職しました。時代は変わってペット医療が獣医師のメインになったことから多くの学生が就職を希望しています。獣医師になるためには国家試験に合格しなければなりませんが、合格率は90%程度で最近は自動車学校の合格率と変わりません。しかし25年前の我々の時代は試験制度が違っていたこともあり75%程度で4人に1人は不合格でした。したがって今の獣医師は大変優秀で勉強熱心であり多くの学生が有名進学高校出身者です。
 
動物病院にはどのように就職するの?
 普通の企業のリクルートと同じで、獣医科大学に求人票を送り、また病院のホームページの求人案内などを見た学生さんが病院見学や病院実習で訪れます。だいたい1~2日間病院の仕事ぶりを見学し、希望があれば面接を行います。学生さんは平均5~6件の別の動物病院の見学をしており、先輩や大学の先生の情報や、病院の雰囲気、特徴、院長の診療に対する考え方や得意分野を参考にして就職先を決めます。早い学生で8月ぐらいまでに就職先を決めますが、中には国家試験を合格した3月に就職希望をする人もいます。当院でも毎年求人を行い獣医師の確保を行っていますが、多くの学生が東京や神奈川、大阪などの大都市を希望しておりなかなか一宮の田舎?に来てくれなく求人難が現状です。
 最近は、CTやMRIなど高度医療の行える大きな動物病院に求人が殺到する傾向もあり、獣医師が10名以上の動物病院も珍しくなく、それらの病院には多くの若い獣医師が研修します。
 
動物病院に就職したら?
 ヒトは、医師国家試験に合格すれば大学の医局に配置され、研修医として数年臨床のいろいろの分野を勉強しながら専門分野を選択して、専門科を決定後は各病院で勤務医として働いていきます。しかし、獣医師は動物病院に就職後は各病院のカリキュラムを研修しその後は勤務医の待遇で就職します。多くの勤務医は大学で学んだ知識と臨床現場でより専門性の高い知識を勉強して日々の診療を行っています。
 当院では4月に就職すると、すぐに狂犬病ワクチンやフィラリア予防シーズンに入り来院数が増加して大変忙しくなります。そのため新人獣医師はすぐには外来を行うことはできませんが、看護師と同じ仕事をしながら病院の仕事の流れを学び、休み時間に院内セミナーをしながら薬剤の種類や投与法さらにレントゲンや超音波エコー、血液検査などの器械の使用方法を覚えていきます。1ケ月の研修後、5月くらいから外来で問診やフィラリア検査の採血やワクチン接種を行います。しかし、まだ大学を卒業したばかりで採血に戸惑ったり患者様の質問に答えることができないなどご迷惑をおかけすることもありますが先輩獣医師の指導のもと的確な診療を行えるように努力しています。
 当院では卒後教育のため、私が循環器、消化器、皮膚病、内分泌、腫瘍、免疫疾患、血液疾患などの多くの分野の資料を作り講義を行い、さらには外科手術の助手として先輩獣医師の指導のもと多くの経験を積んでいきます。10月ぐらいまでには、外来での問診から治療のためのアプローチを考えて、各種検査に基づいた診断を理解できるようになります。就職1年後には外来での診察をこなしさらに入院患者の管理、外科手術の助手など多くの仕事ができるようになります。その後は臨床経験を積み重ねるごとに患者様の信頼を得られる勤務医となり大事なペットの診療を任されるようになります。
 
当院を卒業した獣医師の進路は?
 勤務3~4年で新たな道を選択する獣医師が多くいます。当院を勤務し卒業した獣医師は現在24名いますが、退職後開業した獣医師がもっとも多く北は北海道、南は熊本まで全国で動物病院を開院しており、当院で学んだ技術、経験を生かして日々診療を行っています。たまに悩んだ症例や難しい手術の相談を受けますがどの先生も前向きで病院も繁盛しています。またより専門性の高い動物病院や大学に戻る獣医師もおり、さらに海外に留学して勉強している人もいます。ほとんどの先生達は、この病院で診たペット達のことを経験にしてより質の高い医療を行うように心がけており私も当院を卒業して各分野で活躍していることを誇りに思い、自分も皆さんに負けないように日々勉強をして頑張っています。
 
おわりに
 患者様の中には「あの先生が辞めて残念!」「ほかの先生じゃこの子は不安になる」とか「いい先生はすぐに辞める」とかいろいろな声を聞きますが、最近の動物病院では平均3~4年で退職することが多く、当院でもできるだけ長く働いていただけるように色々考慮しておりますが、やはり若い先生達は開業など自分の将来を見据えて人生を考えており一般の企業のような永久就職は困難なのが現状です。
 
院長の独り言
 以前も書いたかもしれませんが25年前、私が就職した頃はまだまだ動物病院も少なく、技術を学ぶという考え方からよく言われる師匠と弟子の関係でした。当然、厚生福利も何もなく、休みは1週間1日、朝から夜遅くまで働き給料も安くただ勉強させて教えてもらえるというものでした。今考えるとその頃の頑張りが、現在に生きており体力的、精神的にもタフになったと思います。院長は師匠で「院長の背中を見て覚えろ!」今では死語のような言葉ですが、若い今の獣医師にはそんなことはとても言えません。昔の話をすると「大変でしたね」と言う感じで現在の待遇は社会的には当たり前ですから本人はピンと来てないと思います。なんだか愚痴っぽいですが、しかし私達との絶対的な違いは偏差値の高い頭の良い質の高い獣医師が現在で、我々の時代は体力と精神力と根性で頑張るなどのスポ根ドラマの状態でした。獣医学も飛躍的に進歩して、世の中のペットに対する愛情や獣医師に対する期待も高く、時代の変遷とともに働いてきた私も、若い人に遅れないように日々勉強して新しい医療技術を学び、年と伴に衰える脳細胞を無理やり活性化しながら頑張っています。


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