ワンちゃん、ネコちゃんの避妊、去勢手術 愛知県 一宮市の動物病院 ふるはし動物病院 | 経歴・学会発表

経歴・学会発表

ワンちゃん、ネコちゃんの避妊、去勢手術


当院で日常最も多く行われる外科手術は、雄では去勢手術(精巣摘出術)、雌では避妊手術(卵巣子宮摘出術)です。多くのペットオーナーの方はペットの生殖器がなくなることに反対したり、健康な体にメスを入れることに不安を抱き避妊、去勢手術を拒むひとがいるかもしれません。また全身麻酔を必要とするため身体に多少の負担がかかることや、術後の合併症、後遺症、副作用を心配される方もいます。
 しかし、不妊、去勢手術を行うことで、将来的に発症する可能性のある性ホルモンの病気や生殖器の病気の予防や問題行動の抑制など多くのメリットがあります。今回はそれらについて詳しくお話したいと 思います。

避妊、去勢手術のメリット
【生殖器疾患および性ホルモンの異常に関連した病気の予防】
 子宮蓄膿症:犬の子宮蓄膿症は10歳以上の雌では25%に発症するとの報告があります。発情期開始後1~2カ月に多く見られ、陰部からのおりものや腹部が膨らみ、元気食欲がなく腎機能が低下している場合もあります。猫の場合は比較的若い年齢で発症します。子宮卵巣全摘出術が必要で高齢のペットでは大きな負担になります。
 乳腺腫瘍:犬の乳腺腫瘍の発症は10~11歳、全腫瘍の30%で50%が悪性であると報告されています。最近、避妊手術との関係が明らかになりました。初回発情前、初回発情から2回目まで、2回目以降の発情で避妊手術をした場合の乳腺腫瘍の発症率はそれぞれ0.5%、8%、26%ということで早期に避妊手術をした場合は乳腺腫瘍の発症率は低くなります。猫では乳腺腫瘍は80~90%が悪性で、全腫瘍の17%に発症すると報告があります。猫の場合も犬と同様で1歳までに避妊手術を受ければ乳腺腫瘍のリスクが減少することが分かっています。
 偽妊娠:犬では妊娠していなくても乳腺が腫れて、乳汁の分泌や巣作り行動をとることがあります。生理的現象なので治療の必要はありませんが犬が攻撃的になったり食欲や元気がなくなることがあります。
 前立腺肥大症:高齢の雄犬で発症します。排尿排便困難、血尿、疼痛、後肢のビッコなどがあります。精巣から出る男性ホルモンの影響があるため早期に去勢してあればこの病気の予防になります。
 潜在精巣(陰睾):内股かお腹の中に残った精巣が陰嚢に降りてこない病気で生後6カ月以降に見られたら異常です。約10倍以上の確率で精巣腫瘍になりやすいためできるだけ早期に精巣を摘出することが望ましいです。
 会陰ヘルニアおよび肛門周囲腺腫:この病気は雄で見られ男性ホルモンが関係しています。去勢手術により病気の予防ができます。
【性ホルモンに関連した問題行動の抑制】
猫では性ホルモンに関係した問題行動が多く見られます。雌猫の発情期は激しい鳴き声を出し、雄猫は攻撃性を持ったり、縄張り意識を示すマーキングのため尿をスプレーしたり外へ出たがる行動を起こします。雌犬では発情出血が見られ住宅を汚したり、雄犬は飼い主にマウントする行動やマーキングを起こします。すべてのペットが交尾するわけではないためストレスの原因になり発情期は精神的に不安定な状態になります。

避妊、去勢手術のデメリット
【麻酔のリスク】
 全身麻酔を必要とするため危険率は0%ではありません。当院では年間1,200例以上に麻酔をかけていますが、麻酔が直接死亡原因になった少数の症例もあります。しかし避妊去勢手術を行うペット達は日常健康であり、病気のペットに比べればリスクははるかに少ないと考えます。また、シーズー、パグ、フレンチブルドックなどの短頭腫は生まれつき気道が狭いため麻酔には十分な注意が必要です。
【手術による問題】
 出血は卵巣や子宮の血管をしばった糸が緩む起こる最大の合併症です。特に大型犬や肥満犬は脂肪が多く血管をしばるのが困難な場合があります。また腹壁や皮膚を縫合する糸が緩んでヘルニアを起こし腹腔内の臓器が脱出してしまうことがあります。獣医師はこのようなことがないよう細心の注意をして手術に臨んでいます。しかしもしこのようなことが起こった場合は再手術により治療させていただくことになります。
【肥満】
 避妊去勢手術後に肥満になる犬や猫が多く見られます。これは手術後に女性ホルモンの分泌が減り食欲が増え、運動が減るため体重が増加します。しかし適切な食事と運動で体重増加は抑えることが可能です。
【尿失禁】
 尿失禁は膀胱、尿道に異常がないのに寝ている時や興奮した時に尿を漏らす状態をいいます。手術していない犬ではこの状態は見られなく、避妊手術後に見られます。女性ホルモンが減少したことが原因と言われ、治療として女性ホルモンを投与すると症状が改善します。生後3か月以内に避妊手術をすると発症率が高くなると報告されています。
【縫合糸のアレルギー反応】
 以前は避妊去勢手術の縫合糸は絹糸が使用されてきました。しかし、絹糸の異物反応がおこり皮膚に穴があいて膿が出たり、腹腔内に糸の刺激で塊ができたりして問題になりました。現在では溶ける糸で刺激の少ない物を使用していますが、それでも発症する場合があり、はっきりした原因はわかっていません。またミニチュアダックスフンドに多い傾向が見られます。

避妊、去勢手術はいつしたらいいの?
【性成熟前の犬猫の場合】
 アメリカでは生後2~3.5カ月齢で避妊、去勢手術を行っています。現在早期に手術を行った後にどのような副作用が出るか調査中ですが大きな問題は見られていません。しかし雌犬の尿失禁やネコの下部尿路疾患(猫の膀胱炎)のリスクが増加するとの報告もあります。日本では以前から言われている性成熟に達する前の犬では生後5~8カ月齢、猫では4~6カ月齢が適切ではないかと思われます。

【性成熟後の犬猫の場合】
 性成熟を過ぎた場合(犬で生後8カ月齢以上、猫で6カ月齢以上)では、発情期を避けた方がいいと思われます。発情期は血管が太くなり、出血が多くなる可能性があります(獣医師が注意することで危険は回避できます)。そのため発情期でない時期(無発情期)が適切です。猫の場合は犬ほど問題がなく、どの性周期でも手術は可能です。中には妊娠の臨月で子猫と伴に子宮を摘出する場合もあります。当然母猫には負担がかかりますが大きな問題にはなったことがありません。

薬物による避妊方法
 手術は行いたくないと考えるペットオーナーの方には薬物による避妊方法があります。頚部の皮下にカプセルを埋め込み、発情を抑制する方法がありますが副作用も考えなければいけません。子宮蓄膿症になりやすく、糖尿病や乳腺腫瘍の発症率が高くなります。そのため長期的な避妊を目的とした場合はメリットが少ないため手術を行ったほうが無難だと思われます。

院長の独り言
 私が研修医のころは1日に4~5頭の避妊手術を毎日やっていました。当時は外猫や放し飼いの犬が多く、間違って子供を作る危険性があるため避妊、去勢手術は当たり前だったと思います。おかげでどんなに大変な避妊手術もできるようになり、また傷口も小さく、手術時間も早かったと思います。現在は当院の勤務獣医師が手術をするため、私が手術をする機会が減りました。たまに手術をすると以前より傷口が大きく時間も倍ぐらいかかるような気がします。「腕が落ちたのかな?」と不安になることがあるため、最近ではまた避妊手術をするようにしています。

一覧に戻る



COPYRIGHT(C)2012 FURUHASHI ANIMAL HOSPITAL