老齢犬の痴呆を考える パート1 愛知県 一宮市の動物病院 ふるはし動物病院 | 経歴・学会発表

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老齢犬の痴呆を考える パート1


 最近はワンちゃんの寿命が延びてきたので、かなり高齢のワンちゃんが増えてきました。そのため、ヒトと同様な「ぼけ」と呼ばれる症状のワンちゃんも見られ、飼い主さんのワンちゃんに対する介護の問題で相談を受ける機会が増えてきました。そこで今回は、犬の痴呆症について考えたいと思います。

痴呆とは?
 犬の痴呆の定義は、「高齢化に伴って、一旦学習によって獲得した行動及び運動機能の著しい低下に始まり、飼育困難となった状態」とされています(内野富弥ら 犬の痴呆に関する研究より)。つまり、高齢犬が日常生活の中、排泄障害や歩行障害、異常な夜泣きや徘徊などの症状がみられたワンちゃんのことを言います。
 人の場合は、「痴呆」という言葉に差別的意味があるため、その代用語として「認知症」と言われていますが、今回はとりあえず「痴呆」という言葉で統一させていただきます。

痴呆の診断
 痴呆の診断は診察に来られたワンちゃんの状態と、飼い主さんからの情報で判断します。現在、痴呆テストと呼ばれる簡易診断法がありそれを参考にしています。

犬の痴呆テスト(13歳以上)
1.夜中に意味もなく単調な声で鳴き出し、止めても鳴き止まない。

2.歩行は前のみ、とぼとぼ歩き、円を描くように歩く(旋回運動)。

3.狭い所に入りたがり、自分で後退できなくて鳴く。

4.自分の名前がわからなくなり、飼い主の判断もできない。何事にも無反応である。

5.よく寝て、よく食べて、下痢もせず痩せてくる。

判定:1項目で痴呆を疑う 2項目以上で痴呆と判定する

痴呆犬の発生状況
 犬種別では、日本犬雑種が48.9%、柴犬が34.3%で日本犬以外ではヨークシャーテリアが2%で最も多く、それ以外の犬種は少ないとの報告があります(126回日本獣医学会講演要旨集 1998)。全年齢における発生率は平均0.4%程度で、腫瘍や心臓病、糖尿病に比べればはるかに発生率は低く、その理由はおそらく全犬種の中で雑種や柴犬の飼育頭数が減少していることが考えられます。
 発生時期については季節と関連があり、気温の低下が始まる10月から発症例が増加して1月が最も多くみられます。そして気温の上昇とともに減少傾向になります。つまり飼い主さんが痴呆に気づき来院するのは冬が多いと考えられます。

痴呆と介護について
1.合併症について
痴呆犬は多臓器疾患(心臓弁膜症、腎障害、関節疾患、ホルモン異常、腫瘍など)を合併している場合が多く、多くの病気の治療が必要です。しかし完全に治療することが困難なため、できるだけ負担の少ない治療を選択します。

2.体温調節
先ほど書いたように冬に多く発症することから、寒さ対策が必要です。痴呆犬は全く体温調節できないわけではありませんが、ヒトと同じように温感の感覚が低下するため風邪に注意しましょう。また夏場は当然熱中症の管理も必要です。

3.夜泣き、徘徊
夜泣きは近所迷惑や睡眠不足で飼い主さんにとって重大な問題です。できるだけ昼間は日光浴をさせて、できる限り運動させることが必要です。関節の硬直や寝ダコ(じょく創)の予防にも大切ですし、体内時計をできるだけ正常に戻すためにも昼間の運動は欠かせません。

4.排泄異常
寝たきりになると、その場での排尿、排便になり管理が大変になります。現在ペット用の紙おむつなどが市販されていますが、頻繁に交換しておしり周りを清潔にすることが大切です。室外飼育の場合はその場で排泄してしまい、ハエウジが感染し悲惨な状態になることがあります。できるだけ運動をさせることによって排せつを促すことが大切だと思います。

5.食事について
痴呆犬は、食欲があるにもかかわらず栄養失調な状態になりがちです。中には異常な食でなんでも食べてしまうこともあります。一般的は高齢犬専用の食事や、塩分制限の薄味なものがおすすめです。また水分は十分与え、脱水症状にならないようにしてください。

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