老齢犬の痴呆を考える パート2 愛知県 一宮市の動物病院 ふるはし動物病院 | 経歴・学会発表

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老齢犬の痴呆を考える パート2


前回号では、ワンちゃんの痴呆についてお話してきましたが、今回は、実際どのように介護をすればよいかを説明したいと思います。

痴呆の症状の中には、夜泣き、徘徊、寝たきり、排泄障害などについて多くの飼い主さんから相談が寄せられます。「どのようにすればこれらの症状が完治するか?」と言われれば、「恐らく治ることはありません。」と言わざるおえません。また現在ペットの高齢化に伴う痴呆を十分に介護するマニュアルもないため、獣医師が飼い主さんの要望に答えながらアドバイスしていることが現状です。

夜泣きについて
痴呆犬において多くの相談の中で最も多いのが、夜泣きです。ほとんどのワンちゃんが夜の11時以降から朝方にかけて、遠吠えのような響きわたる声で一定期間泣き続けます。飼い主さんがいれば、鳴き止む場合がほとんどです。そのためご近所迷惑を考えて夜間に付き添うため、睡眠不足になったり、ご近所からのクレームに頭を悩ませる方もおられます。 
 夜泣きを完全にやめさす有効な治療法は残念ながらありません。しかし夜泣きを緩和する方法はあります。

1)昼間にできるだけ日光浴をさせて、日照リズムを元に戻してあげる。歩行可能であれば、外界の刺激や歩行機能維持や筋力の低下防止のためできる限り散歩してあげるのがいいと思います。

2)室外飼育の場合はできるだけ室内に入れてあげてください。保温や換気に注意して、真っ暗にせず、薄明かりで夜間を過ごすのもいいかもしれません。

3)サプリメントの補充は、軽度の痴呆の場合多少効果があります。不飽和脂肪酸であるDHAやEPAが老化の進行を抑制します。ただしこのサプリメントのみで夜泣きを抑えることはできませんので、あくまでも補助療法です。

4)夜泣きを薬物投与によって完全にコントロールはできませんが、どうしてもやむおえない場合、睡眠薬や鎮静剤やトランキライザーを投薬します。基本的には睡眠薬は睡眠導入のために使用することが原則ですから、痴呆犬の場合完全な睡眠状態を得るためにはかなりの高用量を投与することになります。そのため痴呆状態は悪化し、完全な寝たきりになったり、意思の疎通が困難になったり、心肺機能や内臓機能の低下が懸念されます。多くの痴呆犬の飼い主さんはこのことを了解した上で薬物療法を選択していただくようです。

床ずれの管理
 床ずれは専門的には、褥創と呼び、体の一部が持続的な圧力が加わることで、その部分の皮膚の血行が阻害されて壊死がおこり、皮膚に潰瘍やびらんが発生します。床ずれのほとんどが中型犬から大型犬に見られ、小型犬では少ないようです。
ヒトの介護では床ずれについてかなり管理がマニュアル化しており、十分な介護がなされています。ペットの場合は多くが高齢であり、飼い主さんのペットにかかわる時間が制限されるため早期の発見は困難な場合があります。そのため潰瘍が進行し化膿して悪臭で気づくこともあります。

1)マットの使用
ヒトの場合専用のマットが多く市販されていますが、ペットの場合多くの犬が排泄によりマットを汚すことが多くヒト用のものは使用しにくいかもしれません。現在ペット用の防水機能付き低反発マットが市販されていますのでそれらのものを購入されるのがいいかもしれません。

2)おむつの使用
ペット用のおむつについては多くの種類のものが市販されています。かなり機能もよく、尿ただれの発生も少なくなりました。しかしおなか周りの毛を刈ってやり汚れが毛に絡みつかないよう気を使ってもらい、内股がおむつのゴムが食い込んで皮膚病を発生することがあるため、1日3~4回の交換が必要かもしれません。

3)体位変換
以前は体位変換が床ずれの予防に有効と考えられましたが、現在は低反発マットなどの除圧が可能なマットがあるため、無理やり体位を変えることによりペットにかえってストレスを与えることもあるため必要最小限でいいと思います。

4)マッサージ
寝たきりのペットは手足が細くなり、関節も曲がりにくくなります。そのため、さらに運動機能が低下します。そのため、関節をゆっくり曲げてあげ筋肉や関節の機能の低下を予防しましょう。また太ももから腰回り、首筋から腕回りを軽くマッサージ行い、温かいタオルで拭いてあげることにより慢性的な疼痛が軽減することもあります。

床ずれがひどくなったら
床ずれがひどくなった場合は病院へ連れてきてください。完全に治すことが困難でも傷の管理ができるいろいろな方法を紹介できます。現在では傷を早期に治すドレッシング剤(被覆材)が多くありますので、市販されている商品を紹介することも可能です。

食事の注意
 痴呆犬は食事を自分で食べることが困難であり、また食べる動作をしていても飲み込めなく十分に栄養が取れていないケースもあります。また飲水もできない場合は栄養失調と脱水状態に陥っていることもあります。動物病院にはペースト状の栄養フードがあり、水に溶けやすく投与が簡単にできます。また経腸栄養と言い、管を使用した栄養ルートを設置して胃内に食事を投与することも可能です。麻酔がない場合は鼻から管を留置する場合と、麻酔が可能であれば、内視鏡を使用して胃内に管を留置する場合があります。胃内に留置した方が管理はしやすく、多くの食事が投与できペットも嫌がりません。

 ペットも獣医学の進歩により寿命も延び、最近では15歳以上のペットも増えてきました。人の年齢で考えれば80歳以上ということになり、ペットの高齢化もヒトと同様増えてきました。そのため、飼い主さんが高齢化したペットとどのように考えるか、また我々は何をアドバイスすべきかなど多くの課題が出てきました。'

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